えこひいき日記
2001年9月11日のえこひいき日記
2001.09.11
日本にそのニュースが入ってきたのは夜だった。ニュース速報で映像とともに伝えられたニュースは信じがたいものだった。ワールド・トレード・センターの飛行機が突っ込んでいく!とても現実のものとは思えない映像だった。
私は6年前まで4年間、その街で住んでいた。ワールド・トレード・センターにも行ったことがある。私は4年もニューヨークにいたくせに、「自由の女神」を見に行ったことがないくらい「観光をしない」住人だったが、当時そのビル内に京都の銀行がオフィスを持っていたこともあって、何度か足を運んだことがあった。ビルの周りにはハーバーがあり、海に向かって開かれた公園もあり、気持ちのよい散歩コースにもなっていた。
そうした思い出や、ニューヨーク在住の友人知人の顔が一気に頭の中をよぎった。
私には、わからない。
直接的な関係で、特定の誰かを憎んだり、殺したいと思う気持ちはわかる。でも不特定多数を同時に、例えば「アメリカ(人)だから」という理由でこれほど強く憎める気持ちは、わからない。わからないが、それが出来る人たちが現にいる、ということはわかる。だからといって、私の友人たちを危険にさらさないで。
私はどうしたらいいのだ。どうしたらいいんだろう。
その夜から一晩中、私はニューヨークへ電話をかけ続けた。つながらなかったけれど。こういうときに限ってというのも妙だが、メインで使っていたパソコンが2日前にダウンし、主なるメールアドレスは皆そこに入ったまなので、ニューヨーク在住の友人のほんの数人のアドレスしかわからない。(その前の日には自室のエアコンがついに壊れたし)わかる限りの友人にはメールを出した。電話がつながったのは、夜が明けてからだった。電話の声は、安堵感、というよりも、どこか「放心」したような感じだった。まだことの全体像がつかめていないようで(とりあえず自分は助かっているし)、なにをどう思っていいのかもわからないようだった。