えこひいき日記
2003年11月12日のえこひいき日記
2003.11.12
昨夜は、先日観にいって予想外のできばえにへこんだ舞台をもう一度観にいった。「あれがいつもの出来ではない」という劇場スタッフさんの言葉を信用しないわけではないが、自分で観てみないことにはやはり納得感に欠けるというものだ。劇場は立ち見も出る超満員。盛況で大盛り上がりであった。まあ、これだったら安心、大丈夫・・・というできばえで、まずは安心したのだった。
しかしロングラン公演というのは大変である。思うに、そもそもそういう公演期間を想定した身体作りや訓練を行う発想やチャンスがないのではないだろうか。日本ではロングラン公演という公演スタイルが一般的ではないのだから(劇団四季など、ごく一部は別ですが)仕方がないのだが、楽日を2日後に控えた出演者のコンディションには、思わず脳裏で中島みゆきの『地上の星』が鳴り響いてしまいそうなものがあった。それは本番のパフォーマンスからは想像しにくい、あくまで裏側のことかもしれないが、「好き」と「やる気」と「根性」だけで持ちこたえるには、ロングラン公演は過酷なのである。毎日おんなじことを繰り返しながらも、ただの繰り返しに終始せず、安定した舞台を提供するには、リハーサル以前の練習の段階から「自分にとっては何が無理で、何が無理でないか」を知る訓練をしておくことが望ましい。私はニューヨークでオフ・ブロードウェイの俳優やジュリアードの学生を指導した経験があるが、私のような仕事をする人間が彼らの指導に携わるのは、「根性で我慢」しちゃうのではない、ハイ・クオリティ・パフォーマンスの「維持」の仕方を体得してもらうためである。好きでこの仕事に携わったのだから、パフォーマーは舞台のために無理をすることを厭わない。だからこそ、無理ができる己の力に頼りすぎてはならない。
ただ、本番中の彼らに今それを強要したとて何にもならない。それはあくまで今後考えていただくことだ。彼らを贔屓にしてしまった私に出来ることは、差し入れをし、若干のアドバイスなどをすることくらいだ。とにかく、スタッフをはじめ出演者全員が無事に千秋楽を迎えてくれることを祈るのみである。