えこひいき日記
2007年3月21日のえこひいき日記
2007.03.21
春分の日である。日が立つのは早い。
もう1週間以上も前のことになってしまったが、2年ぶりに「お水取り」を観にいった。
「お水取り」は、3月12日の深夜(正確には13日の午前1時か2時くらい)に奈良の東大寺・二月堂にて行われる神事である。イベント性のある行事でもないし、観ていて何が面白いのかと言われるとにわかには説明し難いのだが、面白い。うーん、私は何が面白くてあれを観にいくのかなあ。
その数日前に、時間を見つけて福井県の天徳寺と神宮寺に行ってきた。天徳寺は、「瓜破の滝」という名水が湧き出るお寺として有名だが、本当にここのお水は美味しい。お不動様が奉られた神域の下流には水を求めに来る人用の水汲み場があるのだが、たくさんのポリタンクやペットボトルを持った人たちが車で乗り付けては列をなしている。すごい人気なのである。
神宮寺には、奈良の「お水取り」で汲まれる水を汲む井戸がある。二月堂の若狭井が厳重に壁で囲われ、中がどうなっているのかわからないようになっているのに対し、神宮寺の井戸は意外なほどオープンである。中に入れるし、お水も汲める。ここのお水も、お水送りの地である鵜の瀬も、名水とされるが味は各々違う。どうしてこんなにも違うのだろう、と思うくらい違う。
暖冬といわれていた今年でも、深夜の二月堂境内はとても寒い。瓜破の滝で汲んだ水で淹れた熱々のお茶をポットに入れて持参し、神事が始まるのを待つ間飲んだりしていた。何だか少し贅沢な気分になった。
神事が終わる頃、夜空はきれいに晴れて、星が凄くよく見えた。
不思議なのだが、完璧なものほど後に何も残らない。疲れないし、その時のことを思い出そうとしても透明な感覚があるだけで。それはとても幸福なことなのだけれど。