えこひいき日記
2008年7月22日のえこひいき日記
2008.07.22
事務所のレッスン室をマイナーチェンジ。具体的には、レッスン室壁面のマガジンラックを書斎に移動したのだ。理由は、夏場以外は加湿器を使用することも少なくないレッスン室に蓋つきのマガジンラックを壁にぴったりつけて置いておくと、中の本がかびそうになってしまうことがわかったからだ。それに伴って、レッスン室の家具の配置をチェンジ。必然的に書斎のレイアウトもマイナーチェンジ。これでレッスン室には、レッスンで使用する頻度が高い解剖学関係の本や図版と、アレクサンダー・テクニック関係の本しかなくなった。あとの本はすべて書斎に集結。おほほ、居心地が良い。
これで書斎はドア以外の壁面は全部本棚で覆われ、デスク前にマガジンラックが鎮座してしまったために、ますます狭くなっちゃったんだが、妙に居心地がいいんですね。これって、子供が自分だけの秘密基地作って遊ぶような心地なのかしら??
5月に、9月まで新規のクライアントを取るのをやめたりして、時間の余裕と精神的な余裕を自分自身に与えたつもりだったのだが、なかなかどうして、それなりに用事というものは湧き出てくるものである。いや、仕事、生業としてはありがたいことなんです。でも、仕事って、数じゃない。ただ、スケジュール表が埋まっていれば「仕事した」といえるほど、機械的なものではない。特に私のようなやくざな先生業では。でなきゃ、ほんとにえらそーでばかみたいな人になっちゃう。
私のところには、数回で来なくなる方もいる一方で、長くレッスンを続けてくださっている方もたくさんいる。10年くらい定期的に通っている方も珍しくない。当然ながら、そういう人たちのレッスンの内容は非常に緻密になっていく。どこかが痛いとか、できないとか、そういう眼前のトラブル・シューティング系の問題意識ではなくて、できることをよりいっそう磨きあげるための、自分のしたいことをより自分らしく表出するための、身体と認識の問題に取り組んでいく。それは教え手にとって技量を問われるレッスンであり、非常にエネルギーを要するレッスンなのだが、ものすごく楽しい。こういうことに自分の持てる力を費やすのは何ら惜しくない。もちろんそれは長く通ってくださっている方だけのことを言っているのではない。長さではない。数ではない。内容、質の問題なのだ。
一方で、時間や言葉や労力を費やすほどに、それ以上の消耗感を感じるレッスンもある。幸いなことにそういうレッスンは長続きせず、クライアントさんの方からさっさと去って行ってくれることが多い。でも、これもまた回数が問題ではない。1回だろうと、100回だろうと、正直、疲れる。死ぬほど、疲れる。
そんなふうに疲れるのは、私が相手に期待しているからなのだ。いつか私の感じている感じを相手が裏切ってくれることを期待してしまうからなのだ。それに気がついたのが5月だった。でも、この期待がかなえられた験しはない。気がついてみたら、残念ながら、過去、一度たりとも。そうして疲労しきったある日、自分のことが自分で疑問に思えたのだ。なんで、私は自分の感じていることを信用しようとせずに、ただ期待だけしているんだろう、と。なぜ、他者に失望することをこんなに怖がっているんだろう?それが余計な消耗感や失望感をじわじわ連れてくることになるというのに?その一部分の消耗によって、仕事そのものを全部やめたくなるほど心がやさぐれたりするというのに?
うまくいかないことを、うまくいかせたい、うまくいったらいいのにな、と思う。その願望自体は間違っていないのだろう。でも「うまくいく」条件が整いもしていないものを「うまくいかせる」ことは不可能だ。それは、ねつ造になる。嘘になる。そうやって、ごまかし上手になることを、何かができるようになったことと勘違いさせる手伝いをしているとするならば、私の仕事は罪深い。
そういうこともあって、クライアントの取り方、レッスンの仕方にあるリミットを設けることにしてみた。このやり方が正しいのかどうかはわからない。ひょっとしたら、とても素晴らしいクライアントさんとのレッスンの機会を自ら遠ざけてしまっているのかもしれない。あるいは、こんなことを続けてしまうと経済的に困窮する日がもう間近に迫っているのかもしれない。それでも。やり方を変えてみようと思った。もしも間違っていたらまた変えればいい。諦めながら続けるよりも、希望を持ってやめるほうが、いい。
さて、そんなふうにしてまで時間を作り、質の向上キャンペーンをしているわけだから、私も腹くくってちゃんと仕事しないとね、と思うんだが、なかなかー。先日戯れに「死ぬまでにやっておきたいことベスト10」を考えてみたのだが、そのほとんどがどうでもいいような願望(と申しましょうか、かなったらハッピーだけど、かなわなかったら暴れる、というほどでもない、という感じの)だった一方で、「これをしてからでないと、マジ、化けて出る」みたいなことが3つもあって、自分で驚いた。いやー、ほんと、これをしてからでないと、かなしいの。知らないうちに、私にも守るべきものが出来ちゃった。なまぐさくて自分で驚いたけれども、でも、頑張ってみようと思う。それは、目出度くそれを終わらせて死ぬためではなく、生きるために。