えこひいき日記

2009年6月27日のえこひいき日記

2009.06.27

気がつけば太陽暦の6月も終わりではないか。わわわ。

最近、何をしていたかしら、と思い返してみると、盛大に掃除をしておりました。あと、整理。私は割かしこまめに物の配置換えやら整理はするのだが、普段手を入れるところはやはり普段頻繁に使っているところばかり。そこではなく、ストックヤードにあたるところや、普段手をつけないところを掃除していたような気がする。

規模的にも精神的にも大きかったのは、事務所のベランダの掃除。
レッスンに来てくださっている方はお気付きだと思うが、うちの事務所のベランダは大変に鳩に好かれており、ほぼたまり場、というか、巣、なのである。あのベランダで何組のヒナが誕生して巣立っていったことか。そういうのを身近で見守ることができるのも楽しくはあるのだが、問題は鳩の糞なのであった。鳩は掃除はしない。掃除は人間がするしかないのである。もしも掃除をしないまま放置を続けたら、彼らとて自分の分が嫌になって出ていくことがあるんだろうか・・・などと想像しなくもなかったが、そこまで耐える耐久力がなくて、つい掃除をしてしまう。そうすると鳩にとっても居心地がいいらしく、ますます居着く・・・というルーティーンがここ数年繰り返されてきた。
ビルの管理人とても、この建物に去来する鳩のことはご存じで、ある時「鳩よけグッズの取り付け工事をさせてください」と言ってきたこともあった。管理人さんが用意したのは、とげとげがいっぱいついた黒い板。これをベランダや手すりに取り付ければ鳩はそこを止まり木にできなくなるだろう、という考えだったらしい。しかし残念ながら黒いとげとげが功を奏したのはほんの数日で、何と鳩はそのとげの上に止まってしまうのであった。いかついとげとげでバランダの見栄えは悪くなるし、とげとげを目に入れたくないのでブラインドを下ろしたままにしておくと、さらにバランダは鳩の天国となり、卵を産んでヒナを育てるのであった。

先日、ヒナが飛べるようになったのを見届けたのを機に、ベランダから鳩を追い出すことを決意した。
まずは2日かけてベランダの掃除。糞を掃除し、とげとげを撤去してまた清掃。事前に園芸店などで販売されている鳥よけネットを購入しておいたので、それでベランダごと覆うように設置。きれいになったベランダにはいくつか鉢植えを置き、窓ガラスもきれいにした。
鳩には帰巣本能というものがあり、縄張り意識も強いらしい。清掃の間、ベランダに近づかなかった鳩も人の気配が消えたことを感じて戻ってこようとした。しかしネットがあって入れない。すっかり「自分のテリトリー」と信じて疑わなかった場所に立ち入りができなくなったことに鳩は面食らい、ばたばたとネットに体当たりを繰り返していた。が、諦めて立ち去って行った。
ごめんね、鳩。元気でね。

ところが、である。
ある朝事務所に来てみると、ベランダ内に鳩が2羽入っているのである。入ったはいいが、捕獲されたような状態になって暴れている。おかげでベランダの植物は踏まれてぐちゃぐちゃ。鳩の爪で葉っぱに穴があいてしまっていた。「もー、あんたらぁ!」とおかんのような声を出しながら鳩を追い出し、ネットを点検してみた。幸いネット自体は破られていなかったのだが、ちょっとした隙間をくぐって中に入ってきたようだった。そんなにまでしてベランダの定位置に入りたかったのか?出られなくなるのに??
ともあれ、隙間を補強し、その日は事務所を後にした。
ところが。
やはり翌日その2羽の鳩はベランダに侵入していた。隙間を補強するために置いたレンガが倒れていた。レンガを蹴倒して入ってきたのか・・・恐るべし。私はもう一度、レンガを置きなおし、いくつかの隙間を点検して、帰った。
ところが。
またもや鳩はベランダに侵入していた。
3度の侵入を経験して、私は思わぬ隙間を発見した。ベランダにではない。私の心の中にである。

私はどこかで、鳩を追い出すことに負い目を感じていた。かわいそうに思っていた。しかし同時に、事務所のベランダに巣を作られることは迷惑でもあったのである。だから鳩よけネットを購入して、掃除を行った。でも、半端だった。自分で自分の行動を肯定しきっていなかった。それが「隙」を作るのである。物事を前に進ませない罪作りな行為。だって、鳩がネットを突破して入り込んできたからといって「あら、かわいそう。そんなにここが気に入っているのなら、ネットを取り外しましょう」と思うかというと、私は思わなかったのである。私が感じていた「負い目」とはその程度の感傷である。そんなものにとらわれるから、ネットの張り方も半端になる。鳩たちにも「まだ入り込む余地のある場所」への執着を残させることになる。そしてそれをまた「迷惑だ」などと思う。そういうのって、最低だ。
自分の中の隙間が見えたその目で、もう一度ベランダを点検しなおしてみた。そうすると、何が甘かったのか、少しはっきりしてきた。いくつかの植木鉢の配置を変え、ネットが風で浮くのを抑えるために使っていなかったラティスを住居から運んできた。こんなことさえも、「隙」で曇った眼には映らないのだなあ、と思った。
そうすると、ピタッと鳩の侵入は止まった。相変わらず鳩は時々窓辺にやっては来て羽を休めるが、もうネットに体当たりなどしない。

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