えこひいき日記

2001年11月6日のえこひいき日記

2001.11.06

本日は、猫の予防接種のため、病院にいった。

我が猫・メフィーさまは、猫バスケットを見せると好奇心から自らバスケットに入ってしまうほど、お出かけトラブルなしの猫ではあるが、猫の身にしてみれば、いきなりわけのわからん音の渦巻く中(道路)に連れ出され、横やら縦やらに揺すられて(タクシー車中)、嗅いだことのないような匂いのする空間で(動物病院)、なんのエクスキューズもないままに、知らない人(医師)から腹だの口の中だのを触られるのだから、その人間の振る舞いの無礼さに対してのお怒りはごもっともだろう。予防接種の前に健康診断を受けるのだが、メフィーの態度は「こわがっている」というより、圧倒的に「なにをする!」という感じで、怒っていた。こと、肛門に体温計を突っ込む検温と検便では、「ばかー、ばかー、ばーかーぁ!!」みたいな、最近聞いたことのないような声を上げて抵抗していた。

まったく。これは彼女(彼?)のせいではない。充分なエクスキューズの方法をもたない、人間の技術不足の問題だ。いまだに私はどうやってメフィーに説明したらいいのか、わからないでいる。個の体験として快適とはいえないが、必要なこと、それゆえに「わるいこと」とは言えない行為が存在することを。私も、恐らく医師も、けしてメフィーに苦痛や不快を味わわせたいわけではないが、たとえそれが一時的に「苦痛」を与えることになると知っていても、その行為を止める理由にならない判断が存在することを。

とはいえ、和解はあっさりと成立する。理不尽な行為に走った私に対するお咎めはなく、「予防注射の後は、少し活発でなくなったり、食欲が落ちたりすることがあります」という医師の注意事項もなんのその、帰ってくるや否やメフィーはベランダにのさばるハトを激しく威嚇し、懐かしい我が家のドアや壁の角々に「すりすり」の祝福を与え、ごろごろと喉を鳴らし、おやつを所望なさった。

思えば、「うちの子」になった時点からメフィーはずいぶんと病院のお世話になる機会があった。お腹に回虫がいたり、白目に傷があって目が開けられなくなったりして、どろどろした水薬だの、べたべたした軟膏だのを、日に何度も、嫌がるメフィーを押さえつけて飲ませたり塗りつけたりしなくてはならなかった。私はそうしながらも毎日毎日「メフィーに嫌われるんじゃないか」と怖かったし、自分の行為を一種の「虐待」のように感じたこともあった。例えば交通事故や虐待などの体験から、人間や車を異常に怖がるようになる犬や猫もいる。猫や犬にだって「トラウマ」はある。人間だけの専売特許ではない。しかし、医療行為(でも、目になんか入れたり、針さしたりするんだぜ)は「トラウマ」にならないのか…。猫はその違いを何所で見分けるのだろう、メフィーには何が伝わっているのだろう…そんなことを考えたのであった。

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