えこひいき日記

2002年8月31日のえこひいき日記

2002.08.31

昨日、事務所のすぐ側の「新風館」というところのステージで、以前ここにレッスンに来てくれたクライアントさんがゲストとして歌うステージがあるというので、観にいった。当日になってこのことを知ったので、ばたばたしてしまった。
彼女たちはこの6月にCDデビューした4人組の女の子たちである。私が直接に知っているのはこのうちの一人なのだが、とにかく、とってもうまくなっていたのでびっくりした。以前からテープを聞かせてもらったり、レッスンの中では目の前でうたってもらったこともあったのだが、そのときよりずっと「自分の声」で堂々と歌っていて、なんだかとても嬉しかった。
「プロになる」というのはそういうことなんだろう、とも思った。合っているとか、間違っているとかではなく、自分が思うことを自分の声で、からだで、伝えること。それは責任を伴う仕事なのだけれども、同時にそれ自体が大きな喜びでもある。
しかしまた同時に、ほんとに、完成とか、終わりというものがないことだなあ、とも思う。なんということはないことなのだけれども、微妙な声の高さ、強さ、呼吸の間合い、そういったもので無限に歌の色合いが変わってしまう。
音楽関係のクライアントさんとレッスンをしていて、度々思うことではあるのだが、どのようなからだの使い方をするかによって、生み出せる音が変わり、そのことによって突然、その楽曲の「意味」が急にはっきりと聞こえ出したり、逆に聞こえなくなったりすることがあるのだ。物理的な音声としては、変わらず耳に聞こえているものなのだが、ちょうど高速道路の料金所の「アリガトウゴザイマシタ」が「ありがとうございました」には聞こえないように、音声ではなく、その意味が、伝わったり伝わらなかったりすることがある。それは比べてみなければ気がつかないようなものかもしれないけれど、それは多分、飽くことなく追求するに値する「音楽のチカラ」のような気がしている。あるいは音楽に限らず、「表現する」ことを自分の仕事とするものならば、考えて然るべきものなのだろう。

ステージの上でも、ステージが終わってすこししゃべっているときでも、彼女たちは音楽に対してまっすぐで、熱心で、かわいらしかった。いろいろとたいへんだろうけれども、自分が「いい」と思える音楽を「自分の声」でうたっていって欲しいなあ、と思った。がんばれー!

カテゴリー

月別アーカイブ