えこひいき日記
2010年5月30日のえこひいき日記
2010.05.30
先日、管弦の夕べにお誘いいただき高野山のとある別院に赴いた。玄関には「こうやくん」がいた。驚いて、思わず「うわー、こうやくん!」と言ってしまった。
「こうやくん」は、最近高野山で人気のキャラクターだ。携帯ストラップやらシールやらメモ帳など、「こうやくん」のキャラクターグッズはなかなかの人気と聞く。山内のお土産物屋さんでも「こうやくん」グッズをごっそり買っていくおば様方をけっこう見た。そんな「こうやくん」はますます進出著しいようで、各宿坊には等身大(?)「こうやくん」が鎮座するようになり、折々のイベントには3Dの「こうやくん」が活躍しているらしい。
この「こうやくん」、いわゆるゆるキャラ系ではあるのだが、なかなか侮れない感じがする。その素性は、2015年に高野山開山1200年のメモリアルを迎えるにあたり、高野山の本山金剛峰寺が作り上げたキャラクターなのだ。だからなんなのか、だから他とどう違うのかとか、よくわからないのだが、ゆるくて近寄りやすくてかわいい、だけの者ではない感じがするのだ。「なんや、これー」と思って眺めていた私ですらも、いつの間にやら妙に気になり始めてしまったから不思議なんである。(私はどちらかといえば、ゆるキャラよりも、ご当地ヒーローのほうが好きだ。例えば琉神マブヤーとか)あのぽっかり明いた黒い目と口には虚空がぬりこめられているような気さえしてきた。恐るべし、「こうやくん」。
管弦の夕べはとてもよい雰囲気で、愉しかった。演奏者の技量をどんと前に出すような凄みの或る演奏会も素晴らしいが、技量の或る演奏者が和やかに皆に愉しいでもらうことに心を寄せている演奏はまた素晴らしいものだ。夕べのテーマ自体がその場所の故事に由来したものであったこともあるだろうが、土地の人たちが本当に愉しみにしていた雰囲気があって、愉しかった。私は最終の電車で帰るつもりだったが、最終に乗っても京都まで帰り着けないことに高野山に行ってから気がつき、急遽宿坊に泊めていただくことになった。私の間抜けなミスから起こったことではあったが、管弦の夕べの余韻を持ちつつ山内の静寂を味わい、翌朝は5時起きして朝勤に参加できるのは、やはり嬉しい。あわただしくイベントに駆けつけ、終わるなり帰るよりも、正しい時間の過ごし方である気がする。その後はダッシュ!だったけどね。そして、「眉毛をかき忘れた」どころか、山内から帰宅まではすっぴんで過ごす羽目になったのではあったが。
遠くに行くのは好きだ。物理的には京都から3時間ほど、その場所を「遠い」というべきか否かはわからない。私の感じている「遠さ」はそういうことだけではないのだろう。でも、私の思う「遠さ」は、自分を遠くにやるためのものではなく、自分を近くするためのもの、という気がする。