えこひいき日記

2010年7月16日のえこひいき日記

2010.07.16

世の中には健康グッズとか、新手のフィットネスグッズとかがたくさんある。こんな仕事をしているせいか、クライアントさんがほとんどひっきりなしにそうしたものに関する話題を持ってきてくださったり、使い方を相談されたりする。だから、というわけではないが、私が個人的にそういうものを購入することはほとんどない。先日、椅子の話でもこの「日記」に書いたが、グッズだけに頼って何らかの健康を手に入れるのはきわめて困難だと思っているし、「手っ取り早さ」とか「モノがあることがやる気(やった気?)の象徴」というところに重きを置くのでなければ、意外と多くのことが思ったよりも身体一つでできると思っているからだと思う。

バランス・ボールと呼ばれるボールは、在米時代から使っているものだから、かれこれ18年は同じものを使っていることになる。そう考えると意外と物持ちがよいし、ボールも丈夫なものだな、と思う。
今でこそ、フィットネスクラブなどでもすっかりおなじみになったボールではあるが、私のレッスンでは基本的には椅子代わり。そして「これを使って鍛えましょう」というよりも「これを使って自分の身体を知りましょう」という、より教材チックな使い方だ。

例えば、ボールに座ってバウンドしてみる。跳ねるボールと同調して、膝や足首、股関節など関節たちが動いているのを感じてもらう。「動かす」のではなく「動くことができる」こと、「動ける状況で身体がスタンバイしていられる」こと、そしてその感じを「感じ取る」ことが重要なのである。それは機敏かつ機能的に反応できる身体作りや、複数の関節や筋肉の連動を必要とする「しなやかな」動作には不可欠な要素だ。
こうしたタイプの動きを能動的に「動こう」として作ると、どうしても力みになってしまう。「もっと力を抜いて」とか「動きが硬い」といわれる人は、動こう・動こうとするあまりに、動ける状態としての姿勢、あるいは姿勢という名の身体状況が十分ではないのだ。
他者から「動きが固いね」といわれても自覚しきれていなかった人はまず自分の感覚で自覚することが大事だし、さらに自分が具体的にはどこにより力みを生み出しやすいか具体的に知ることが改善を大きく進める。よりよい状態になるために、指導者のアドバイスを素直にきいてやってみることは大事だが、ただ他者のアドバイスを機械的に従うだけでは自分のものにならない。自分の感覚で理解して、もしも「わからない」のであれば「わからない」ことを受け止めて、その上で動かなくては真に自分の身体を理解することは出来ない。
また、胴体にもバウンドの振動が伝わっていることを感じてもらう。その振動は「自分の胴体が動いている」ことを感じさせてくれると思う。しかしその様子を鏡で見ると、「その動き」は必ずしも「姿勢に変化を起こす」タイプのものではないこともわかると思う。かといって、踏ん張って姿勢を変えないようにしてのことではない。内的には動いている。だが外的な動きにならないのだ。動かないけど、動いている。そういう動きがある。それは「動ける安定感」としての姿勢を考える上で重要なのだ。
ただし、振動が身体の度の部分に伝わるかによっては、姿勢は変わるし、ゆがむし、バランスを崩すこともある。それを「失敗」と切り捨てるのではなく、どうバランスを崩すのかを観察することによって、自身の傾向を知ることが出来る。それは「自分にふさわしい改善策」を見つけるに当たって重要なことだ。見掛け倒しのその場の「成功」は、単に「自分の個性」を「恥」とみなしての取り繕い行為に過ぎない。そんな「成功」よりは素直な「失敗」のほうがはるかに未来がある。

そして最近、新たにバランスディスクなるものを買ってみた。これもその存在はクライアントさんから知らされていたものの「何に使うねん」と思っていた代物だったのだが、ちょっと使い方を思いついたので購入してみた。思いついた使い道を何人かのクライアントさんに提案してみたが、なかなか良い手ごたえのようである。

大事なのは道具に使われたり、振り回されたりすることではなくて、使いこなすこと。そのほうが道具も大事に使えるし、使ってみて得られるものも多いように思う。

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