えこひいき日記

2016年2月2日のえこひいき日記

2016.02.02

明日は節分。

思えば、日本で仕事をして20年以上になる。長いような、短いような。何かをしたような、まだ何もしていないような。

「あのとき、このレッスンに出会っていなかったら私は今まで踊り続けていられなかった」と、先日あるダンサーの方に言われた。
素直にうれしかった。
それにしても、不思議なことだ。その人は決して頻繁にレッスンに来ていたわけではない。しかし、来なくなることもなく、気が付けばその方との付き合いは20年。
「レッスンを受けると、その時のことを時間をかけて咀嚼するような感じなんです。1か月ぐらいとか、自分のからだでいろいろ試して」と、その方。
お見えにならない間もそういうふうに取り組んでくれていたことも、すごくうれしい。

その方だけではなく、そのような心持で付き合いを続けてくれた方々に、心から感謝している。

「商売」としてこの職業を考えるならば、頻繁にレッスンに来てくれるクライアントが多い方がありがたいとは思う。いや、「商売以外」の意味でも、必要と思う回数来てもらえなければ伝えられないことは確かにある。だから「頻繁」であることも、ときにはすごく大事だ。

一方で、私は依存して頼られる関係性が得意じゃない。「商売」として「人気」を得ること、誰かに依存されて、それが自分が必要とされている証、能力の証明のように思えて、それが金銭的にリッチになることともつながって、誇らしくなる気持ちもわかる。そういう気持ちが私の中にみじんもないわけではない。ある。でも、20年かけて気が付いたことは、私はそういうふうに人間と付き合うのがかなり苦手だということだった。

ひとが、ひとりひとり違った存在であること。それは「依存」を愛する人間には「孤独」に聞こえることだろうし、私は冷たい人間に思えると思う。でも私にはそのことがとても貴重なことに思える。
とはいえ、「違い」を無条件に貴重品扱いしているわけではない。誰かや何かと違っていればいいという問題ではない。アピールの道具として「違い」を見せつけようとするのは、結局は誰かの関心を買うための手段に過ぎない。誰かや何かと「おんなじ」になりたくて、相手を自分のようにしたくて、「違い」を使っているだけだ。あるいは、単に他者とのコンタクトから生じるものを「干渉」と受け止め、そこから生じる苦痛を遮断するために「違い」や「個性」というタイトルを使っているか。
そういう、「使われた違い」には、なんというか、輝きがない。面白いときもあるが、割とすぐ飽きる。

私がこの仕事を続けてこれてありがたかったことは、いろんな方に会う中で、不意にその人だけの“輝き”に出会えたことだ。念のために書くが、それは「からだの使い方が完璧な人間に出会った」とか「その人のからだの使い方を完璧なものに導けたことを喜んでいる」いう意味ではない。「からだの使い方」なるものが「正しい」ことを喜べるのも、この“輝き”があってこそだ。その人が、その人であること。それがただ「ある(存在する)」だけではなく、「意思」をもって輝きを放つ瞬間がとても好きだ。だから、私はアーティストとのレッスンが好きだし、創造的な思考を持った人とのレッスンが好き。(ただし、アーティストだからって最初からずっと“創造的”なわけじゃないよ。普通の人以上に、ぐっちゃぐちゃになるときもある)自分で自分の人生を受け入れて、でも意思をもって生きている人が好き。

話は飛ぶが、次に申年が来る頃、私は還暦を迎えることになる。えらく長く生きたような気がする一方で、ここまでやってきても、生きてみても、まったく小僧同然なことに愕然とする。
先日ある保険関係のファイナンシャルプランナーに「そろそろ退職金のご準備を…」と言われ、「そうか」と思った。未熟者でも年は取る。未熟だからって若者っぽいつもりでいちゃいかんわけだよ。未熟なのは事実だけど、それを鎧のようにしちゃうと、どこかで自分を弱く見せて守ろうとするあざとさが勝つようになる。謙遜していれば攻撃されない、何とも向き合わないかわりに何かとの衝突は避けられる、自分をさらけだす恥ずかしさや自分自身と向き合うことから逃げられる。
でも、時間が限られているってことは、未熟者にはありがたい目安にもなる。どこかで「完成してから出そう」と思っていたいろんなことを、「いや、生きているうちに私が完璧に完成するなんて無理だから、自分がしたいと思うこと、すてきだと思ったことのカケラを、ばらまいてから逝こうぜ」と思えたりするのだ。好きなように生きてやる。いや、今までだってかなり、好きなようには生きてきたけど、もっと。

んで、大変久しぶりに講座の開催を考えている。ずっと考えてきた私が思う「すてきなこと」「いいこと」のカケラを詰め込むつもりだ。詳細は後日ね。

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