えこひいき日記
2020年4月11日のえこひいき日記
2020.04.11
自宅での自主隔離生活の話の続きを書こうと思っていましたが
おもむろに急遽保護した黒猫さんのお話を。Twitterにあげたやつです。
事の発端は、友人からの相談だった。
友人が利用している駅の傍の駐輪場には数匹の猫が出入りしていたそうだ。
猫好きの友人は、自分のバイクのカバーの中に使い古しのタオルを敷いたりして、寒い折には猫たちが休憩しても大丈夫なようにしていたらしい。
ある日、いつものようにバイクのカバーをめくると中に敷いていたタオルにべったり血がついていた。驚いてあたりを見回したが、それらしい猫の姿は見当たらない。何があったんだろう?!
…駐輪場の人に話を聞いても、何があったかはわからなかったが、こういう状況を目にしてしまうと放っておけない。
TNR(強勢避妊手術をしても説いた場所に猫を戻し、そこの地域ネコとして生きていってもらう)になるかもしれないが、若そうな猫もいるので、里親募集もできるかも…ということで、私に相談が来た。
知り合いの保護猫活動をしている人にもアドバイスをもらいつつ、とりあえず、保護ができたら1頭はあずかれる体制を自宅に整えた。
自宅の猫たちを説得し、ケージをスタンバイ。
駐輪場がある場所は、猫が隠れられそうな場所が豊富にあり、気まぐれに餌やりさんも出没する場所らしくて(駐輪場の人が話をしようとしても逃げてしまうらしい)なかなか猫たちの行動パターンが安定が把握できない。
…とか言っているうちに友人から連絡が来た。「猫を保護した」と。
ほぼほぼ手づかみで保護できてしまったらしい。
うちにやってきた黒猫さん(推定6か月。女子)は「本当に野良?」というくらいおとなしく、人懐っこかった。
でも確実に野良で、何ヵ月も前から駐輪場で目撃されていた猫である。
だからいきなり自宅の猫と混ぜるわけにはいかない。病院で駆虫と検便をクリアしてからうちに来たとはいえ、病気を持っている可能性もある。ケージに隔離して、食器も別にして、2週間から1か月後の血液検査が終わるまでは一緒にできないのだ。
黒猫さんは緊張してご飯も食べないし、トイレも使わない。
うちのこら(男子猫と女子猫。7歳と6歳)まで緊張して、ご飯を大量に残し、女子猫などは風呂場に逃げようとする。トイレも使わない。いつもはゲスト猫が来ると強気なのに、どうしたことだろう。
薄氷のような緊張の中、最初の夜が過ぎた。
翌朝起きると、黒猫さんがくしゃみをし、鼻をたらしていた。
いかん!と速攻で近くの動物病院へ。点滴と投薬をしてもらい(ここでも超おとなしい)、自宅でも点眼・点鼻薬を受け入れてくれた。
少し体が楽になったからなのか、トイレも使い(最初は失敗していたので、トイレのフォーメーションを変更)、かりかりとお薬入りチュールも食べてくれた。
その日の夜は、黒猫さんは結構夜啼きをした。
野良が板についた猫さんはあまり夜啼きをしない。「鳴く」ということは、自分の存在を他者に知られる・知らせることであり、野良の世界では危険を伴うことだからだ。
でもこの猫さんは何かを表現している。
早朝、猫さんの点眼・点鼻(一日に5回もしなくてはいけないのだ!)を済ませた後、少しの間部屋の中を歩いてもらった。
なんとなく、ここがどこだかわからないことが不安で鳴いているような気がしたからだ。
隔離期間中なので本来はNG行為なのだが、幸いうちのこらは遠巻きに見てはいるがとびかかるような状態にはないし、とにかく部屋の中を歩いてもらった。黒猫さんは素早く、姿勢を低くしつつもあちこちを見て回った。
印象的だったのは、窓辺の椅子に上がったときだった。そこでだけはしばらく立ち止まってじっと外を見ていた。
その光景を見ると、「外を恋しがっている」「出たがっている」と想像してしまうかもしれない。
でも私が感じたのは彼女の「安堵感」だった。
「ここは、あのお外じゃないんだ…」
そんな感じだった。
そのあと、ケージに戻った黒猫さんはぐっすり眠った。本当に、からだを横にして、ぐっすり眠っていた。
その夜、彼女は初めてケージに吊り下げてあるおもちゃで遊んだ。
彼女は案外どんくさくって、2段ケージの上の段に一発で飛び上がれず、懸垂のようなことになっては落っこちて、下にあった水鉢をひっくり返す、ということを2回繰り返したので
小さな踏み台を入れたらすごく快適になったらしい。
ケージは彼女の「おうち」になった。
うちのこらの態度も通常運転になった。
彼女の暫定名(?)は「はな」ちゃんにした。
今後まだ、ウィルスチェック、ワクチン接種2回、避妊手術が控えている。はなちゃんがうちのこになるのかは、まだわからない。
でも彼女の猫生に関わった人間として、彼女には幸せになってほしいと思っている。
急転直下の出会いであり、彼女の猫生も数日にして劇的に変化したことになるのだが、その劇的さに惑わされることなく、これが彼女にとって必然であれと願う。
このお話もまた続くと思うので、また報告します。