えこひいき日記

2001年2月15日のえこひいき日記

2001.02.15

事務所のある界隈は、デパートなどの立ち並ぶ地域に極めて近いながらも、どちらかというとオフィス街っぽい、少し静かな地域であったのだが、最近は新しい施設が続々オープンしてきて、風情が変わりつつある。最近、三条通は何かとホットなのだ。
先日も、『新風館』という施設がオープンし、なかなかにぎわっている。錦市場にしろ、デパートにしろ、ここにしろ、事務所からつっかけで走っていける距離になることが誠に便利。

私は京都生まれの京都育ち、そして京都ファンだと思う。ニューヨークも好きだが、京都はよい。アメリカから帰ってくるとき、周りに人間は、日本では珍しい仕事をするのだから「当然」東京でしょう、というふうに言ってきたりしたが、私には全くその気はなかった。事務所には京都のタウン情報誌が待合にそろえてあるが、それは遠方から来るクライアントのためでもあるが、私自身の興味でもあるのだ。

京都ホテル(これもご近所)の改築工事の際にも景観問題が取りざたされたのだが、京都独特の景観にしろ、伝統にしろ、ただ変えずにいればよいかというとそうではないから、ややこしい。つまり、そこがセンスの見せ所だと思うのだ。京都は伝統ある都市だが、けして保守的ではない。むしろ「あたらしもん好き」である。どんなに新しいものを取り入れても、それが悪目立ちして浮いてしまうような取り入れ方ではなく、新しいんだけど何だか馴染む、何かが地続き、よろしいやおへんの、というのが「京都的」という気がするんですよね。そのあたりのバランス感は実に微妙なもので、鉄筋コンクリート・新素材の建物でも「よろしいやないの」というのもあれば、木造だろうがなんだろうが、どう考えても大失敗、という建物もある。
みにくいものは、たんじゅんにかなしい。目に悲しく、居心地が悪い。
いつぞや、鴨川にフランス風の橋をかけようなどというふざげた案が持ち上がったときは、怒りを通り越して、あきれてしまった。そういうことを「ね、いい考えでしょ」と言い出すのが京都のお役所の人かと思うとかなしくなってしまう。住んでいると、京都のそのままのよさが「あたりまえ」になって無感覚になってしまい、「新奇なことをする」ことが「改善」のように思ってしまいがちだが、本当の「改善」はこれまでのことのよさを受けとめた上で成立するものだと私は思うんだけどな。それは「からだの使い方」についても同じなんだけれど。

賛否両論ある新しい京都駅のビルだが、私はなかなか好きである。中を歩くのも好きだが、晴れた夕方に、事務所を出て烏丸(からすま)通りから南にまっすぐ眺めると、ちょうど駅ビルの正面玄関口が道の向こうに見え、まるで羅生門のように「都市の門構え」になっているのが見える。なんとなく、頼もしい眺めに思えて、私は好きである。

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