えこひいき日記

2001年11月5日のえこひいき日記

2001.11.05

私の中では「擬人化」とはまた違う感じなのだが、ものに名前を付けて呼んでいることはよくある。ちょっと語弊があるかもしれないけれど、ものに「格(キャラクター)」を感じる、というか。ものを「人間化する」「人間のように扱う」のが「擬人化」だとするならば、私の行為はそれとは違って、「これは、これなんだなあ」というだけのことなんだけれども、「これがこれである」ことに対する敬意?みたいなものがあって(あと、名前がついていないものに対しては名前を付けた方が認識しやすいということもあるので)、名前や敬称をつけて呼ぶ。

レッスンの中でも私は「右脚さんは右脚さんなりに、左脚さんは左脚さんなりに(動かしてor 動いて みてね)」というような言葉づかいをすることが多いが、それはけして「幼児語化」や、親しみやすさを狙って、みたいなことではなく、私にとっての「リアリティー」なんである。私にとって「わたし」は、いわば「複合企業」だ。「ユニット」だ。私の「からだ」もまた、「手」とか「足」とか「血管」とか、あるいは「きき手」「きき足」「わかりやすいこと」「わかりにくいこと」等々からなる「複合ユニット」であり、多くの「部署」とそこに所属する「社員」が、それぞれの仕事を「プロフェッショナル」(「オールマイティー」ではなく)にこなしてくれるおかげで、私は「わたし」でいられると思っている。

クライアントさんの中に、しつこい筋肉の緊張に悩まされている女性がいる。原因は、一言で言ってしまえば、彼女が行動に必要な力以上の力をいれて行動してしまうからで、彼女も徐々にそのことに気がつき始めてはいるのだが、なかなか自分で「現場」が押さえられず、気がつけばもう身動きが取れないほど凝り固まっているという状況なのだ。原因も現象も実にシンプルではあるが、その凝り固まりようはけっこうハードで(現に筋肉が熱を持っていることが多いのだが、ちょうど息を止めて人が顔を真っ赤にしているような感じだ)、しかもしつこくしつこく同じ場所に現れ、気がついたときには既にかなり固まっていて、力を抜こうとしても自力ではなかなかできないという状況が、精神的にも彼女を疲れさせてしまうのである。徐々にだが、確実に改善は見られるとはいえ、こちらにとっても根気が要るレッスンである。

それがあるときのレッスンで、今まではがちごちに凝り固まった自分の肉体に対して「不満」というか、「もう、なんでやの!」みたいな気持ちをぶつけることが先立っていたのだが、あるときにふと、自分の肉体に対して「あんたにもあんたの事情があるかもしれないものね」などと思ってみたら、すっと力が抜けた、と報告してくれた。「人間関係とかも、一緒ですものね」と言ったら、彼女はきょとんとしていたが(そういう方向から考えたことはなくて、新鮮だったらしい)、「そのほうがわかりやすい」とも言ってくれた。そう、「変化(改善)」するにもエネルギーとか、一種の勇気がいる。そのエネルギーは「命令」や「やけっぱち」や「反動」で捻出するものではなくて、「状況を理解する」ことによって自ずと生まれてくる力なのだ。今ブームになっている「陰陽師」のスタンスを例にだすまでもなく、これは「基本」だ。ただただ当然のことなのである。でも、「基本」から外れても人は生きていけるくらいタフだし、「ちからまかせ」に物事を扱ってきた経験しか持たない人にとっては、「改善」もまた、まずは「ちからずく」なやり方しか思いつけないものなのかもしれない。考え方とはフィジカルなものだ。つまり、経験に基づくものだからだ。だから新しいやり方をまず「試してみる」ことが大事になってくる。それは勇気の要る作業だし、その方法をいきなり信用しなくてもいいし、「正しい」などと思う必要もない。ただ、ちゃんと目を開き、耳を開いて、「試して」ほしいと願う。フィジカル(体験的)に。「基本」を押さえると、単純に、自分のことがわかりやすくなる。逸脱もまた、自由だと感じる。それだけのことだ。

私の「からだ」は基本的には「共和制」なので、いろんなところがいろんなことを言ってくる。けっこううるさい。だから聞いてはいるけど、言葉はかけずにっこり笑うだけとか、手を振るだけとか、それに対してリアクションをかえさないことも多々あるんだが、無視(「報告」そのものをなかったことにする)はしないようにしている。けっこううまくいっているような気がする。

ちなみに、名前を付けているお気に入り(?)の「もの」は、最近では、ウサギの毛をイメージして作られたというフェイクファーのジャケットを「うさぎもどき」と呼んだり、逆柱いみりという漫画家の『ケキャール社顛末記』に登場する「社長」を「ねこだんな」と名づけたりしている。あと、お気に入りのマグカップについている魚の絵は「ばかざかなちゃん」とよんでいる。(そんなにひねっているわけではない)

カテゴリー

月別アーカイブ