えこひいき日記

2002年7月13日のえこひいき日記

2002.07.13

書こう・書こうと思っていたのだが、大好きなダンス・ユニットJ+Mが東京で開催されたコンペで2つの賞を受賞した。祝!ぱちぱちぱち!!

書こうと思っていたところにJさんからお電話をいただいた。以前から彼らが私に言ってくれていることなのだが、今の彼らの作品の作り方などには以前ここでのレッスンや色々と話したことがヒントになっていることがあるらしい。そういうのを聞くと、やはり単純にとても嬉しい。
これまた以前からこの「日記」のコーナーでも書いていることだが、表面的に痛みや困りごとを「消す」ので終わり、という仕事の仕方は私は好きではない。誰しも痛みや困りごとといった問題意識を持つことからレッスンを開始することが多いし、そういう方法でしか自己と向かい合えない人もいるから、それも「仕事のうち」だとは思っているが、やはり最高に楽しいのはクリエイティヴな感受性をもった人との仕事である。痛みや症状が治まったから「ああよかった」で終わるのではなくて、痛みなどに煩わされなくなることから発想が広がったり、あるいは症状を継続させるメカニズムを自分の行動や思考のパターンの中に発見することによって、それを「可能性」に変えられる人間と仕事をすることである。そういう人とのレッスンは、ぞくぞくするくらい楽しい。
でも、それがすごくタフなことだということも、知っている。倒れこんじゃったり、倒れないように踏ん張るのは意外と簡単だが、仮に倒れても気軽に起きあがっちゃえるような自由を自分の中に保つのは、すごくタフなことだ。そしてそういうタフな「日常性」が彼らのテーマでもある。
ともあれ、彼らは私をそんなふうにわくわく・ぞくぞくさせてくれる数少ない人たちのひとりだ。

彼らの活躍・受賞は心から嬉しいのだが、同時にそれを「我がことのように」喜んでしまうのはかえって失礼かなぁ・・・と心のどこかで考えている自分が居る。なんか「師匠ずら」しているみたいな、「自分の手柄」みたいにしている感じだったら、やだなあ、などと思ってしまう。だってこれは明らかに彼らの力だから。たとえ私とのレッスンの中で参考になったことが合ったとしても、それをそのように使いこなすのかは本人の才能である。(しかしことパフォーミング・アートの世界には、そう考えない人も多い。クライアントのあるダンス教師が「自分のアイデアを他人に勝手に使われた」(実際はちょっと違っていたのだが)といって大騒ぎしていたこともあったし、ある音楽家で人脈に対する所有欲が強く「私が紹介した人なんだから、私のものだ」と主張して紹介した人物と友人が仲良くなることに激怒する、などということもあった。)
彼らもいろいろと気を使ってくれて「甘えすぎだったら言ってください」などといってくださるし、こうして電話をくださったりする。お互い、気を使いすぎかしら・・・と思うこともあるが、でもやはり「なあなあ」にしたくない気持ちはある。盲目的な信頼は裏切りに等しいと思っているから。

コンクールやコンペティションに出場するアーティストは多い。私のクライアントの中にもけっこういる。だが、その参加動機はさまざまで、みてもらいたい作品、作りたいものはあるというよりも「まず認められたい」という気持ちの方が勝っている人もいる。プライズでしか自分を計れない状態になっている人も居る。それでまず売り出して・・・という人も居るが、彼らのコンクールの参加の仕方はちょっと違うかもしれない。勿論、コンクールのプライズは「勲章」になるだろうが、だからといってそれで作品が変わる(変える)人たちではない。受賞がどういうきっかけになるかはわからないけれど、より作りたい作品を作りやすい環境になることを願ってやまない。

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