えこひいき日記

2002年12月14日のえこひいき日記

2002.12.14

寒いです。寒さで窓も曇ります。

一つの原稿書きに区切りがついた。やれやれである。ここ1週間ばかりは、クライアント仕事の後、食事とお風呂を除いてほとんどずーっと原稿を書いていた状況だったので、さすがに疲れた。書くのは、義務感でもなんでもなく、その必要が自分にあるからで、そのあいだは楽しいのだが、疲れるのは疲れる。疲れると悲観が増すのでよろしくない。仕事のことはまだしも、私生活において「うっかり」と何かをし忘れたりすることが多くなってへこむ。物事の順序をオーガナイズする能力が磨耗していることも感じる。いかん、いかん。

ところで事務所の近所に大きめの本屋さんがオープンした。これもまた喜ばしくも困ったことである。どうしても本を買ってしまうからだ。
私は子供の頃から自他ともにみとめる活字中毒である。子供の頃は、親がデパートで買い物しているあいだ、すっと本屋や本売り場で待っていたものだった。2時間は軽く遊べていた。今でも本屋は格好の「遊び場」である。おとなになってこっちもまがいなりにも「書く」方の仕事をやり始めてみると、書く構想がまとまりきらないときなどに本屋に入ると「他人の思想」が押し寄せてきてうるさくなるので、本屋に入れないこともるが、基本的に本屋は楽しい。しかも横はスタバだぜ。道楽者にはたまらないロケーションである。
何を買うつもりもなく本屋に入った場合でも、つい何かを手にする場合が多いのだが、あまりに「つい立ち寄る」頻度が上がるとついに書いたいものもなく、ただ書棚を眺める。眺めているうちに、その書店の本の「扱い方」が見てて来る。つまり「カテゴライズの仕方」でこの本屋の支配人(?)の配慮が見えてくる。そういうのをながめるのも楽しい。

書き仕事で疲れているにもかかわらず、なんとなく、本が読みたくなることがある。しかし疲れているので、新しい小説などは読むエネルギーがない。だから手軽には雑誌に手を出すことになるが、雑誌丸ごと一冊分欲しい情報や好みの内容が載っているわけでもないので、それもうざったいなーと思うときもある。(相当疲れている場合、こうなる)お風呂に入るときに、以前読んだ短編小説などを読むことがあるが、それもねた切れになってくるときがある。そうするとつい手を出してしまうのが辞書なのである。いつかも書いたが、「辞書」は最高にサイケデリックなワンダーランドだ。ただ、「あいうえお順」という意外に何の関連もない言葉たちが次々と登場する。ふだん、どんなにくだらないことでも意味や思考の流れのある世界で使われている言葉たちが、このときばかりは無作為に集う。言葉にはどうしようもなく「意味」があるのだが、それを通常の「意味の流れ」とは違うところから見直す機会は意外とない。だから、辞書を読むことはすごく新鮮な感じがするのだ。
今日も今日とてうっかりと「きもの用語辞典」など買ってしまった。一見私の仕事とはなんの関係もないようだが、身につけるものにつけられた名前、例えば「おくみ」などという、洋服には存在しないパーツの名称に触れることは、そのままその服装を着こなす「文化」と「身体観」に触れるひと時でもある。そこまでお仕事チックでなくても、知らない言葉がごろごろ出てきて、面白いのだ。

このようにしてずるずると活字の魔力にはまる日々なのである。

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