えこひいき日記

2003年12月8日のえこひいき日記

2003.12.08

師走といったら、顔見世である。
今日はクライアントを見た後、ダッシュで(タクシーだから「ダッシュ」っていうのもおかしいか)南座に移動した。演目は4つ。上演時間は5時間ほど。しかしやはり見ごたえはある。この大げさな世界は楽しい。例えば、「一瞬」のモーションがスローになって、ぐるーっといろんなアングルから見える・・・というような、映画『マトリックス』で実写化されたような表現は、実写化されたのこそは最近だが、ものの見え方の感覚としてはずっと以前からあるように思う。歌舞伎で「ばったり」と呼ばれる拍子木の音にあわせて、いくぶんスローな感じで描かれる立ち回りのシーンは、ちょうど『マトリックス』のスローモーション、ストップモーションの戦闘シーンを連想させる。人間が脳の中で、印象の世界で、感覚の世界でとらえる世界像(運動感覚)を描いているという点では、どちらも同じだというような気がする。とにかくこの写実的ではないがどっかスーパーにリアルな世界にしびれてしまうひと時であった。顔見世で上演される演目は比較的わかりやすく、娯楽性に富んで、役者の顔ぶれも豪華なの(特に今年は歌舞伎発祥400年とのことで、ゴージャス)で、面白くない演目などないのだが、特に中村雁治朗さんが踊る『英執着獅子』にはたまげた。彼はおいくつだったか、正確には忘れたが、70歳くらい(?)の俳優があのようなちょっといっちゃってる(?)かわいらしい姫を演じられることは驚愕に値する。特に、夏に延暦寺の『薪歌舞伎』で高僧を厳しいまでにストイックに演じていたのを観ていただけに、「役者ってすごーい」と単純に喜んでしまった。『廓文章』の夕霧役の玉三郎さんの美しさは書くまでもないが、伊左衛門役の片岡仁左衛門さん(ついいまだに「孝夫ちゃん」と言ってしまいそうになる)のほけほけした旦那ぶりは楽しい。基本的には「色男」の路線なのだが、ボケ・キャラであるところが非常においしい。

そうして歌舞伎から帰ってきたらもう夜の10時半くらい。遅れていた短い原稿の校正を送信し(直前になって大幅に変更してしまった。編集さん、ごめんなさい)、とりあえずやれやれなのである。この原稿は近日『誠信プレビュー』という出版社が出している小冊子に載るはずなので、興味のある方はゲットして読んでみてくださいませ。

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