えこひいき日記

鳩のその後

2004.05.27

数日前のこの「日記」に屈伸練習をしないヒナ鳩たちのことを書いたが、その後進展があった。飛べるようになったのである!今はまだ完全に巣立った状況ではなく、ベランダから飛び立ってはまた戻ってくるという感じだが、ともかく無事に飛べるようになった。

人間より人生?が短い鳩の成長は早い。1回の体験が雛に与える影響は人間の1回よりも濃く深いのかもしれない。数時間目を離すとその間に変化が生じていたりする。
25日の段階でジャンプ練習の気配がなく、親鳥もえさを運んでくるのではないのにヒナの様子を見ているという様子が見受けられたのだが、昨日26日になって、突然ヒナがジャンプした。そこにはどうも親鳥の「作戦」があったうようである。これまでヒナにえさをあげるときに、親鳥はヒナと同じ高さの地面(ベランダの面)まで降りてきていた。しかし昨日はそこまで降りてくることをせず、あえてヒナが首を伸ばせば届くような段差の上からえさを与え、しかも十分に与えずに去っていくのである。そういうことを繰り返すのだ。どうやらこの親鳥の誘導作戦が成功したらしい。
初めて飛び上がったとき、ヒナたちはかなり無理やりな体勢(のけぞっておった)で、しかも腕力(翼力?)に頼った飛び上がり方をしたために、一羽はそのまま床に落下し、一羽だけが辛うじて室外機の上に不時着したという感じだった。不時着したヒナもきょとんとしていた。あんな不細工な飛び上がりデビューはこれまでここを巣立っていった11羽(彼らを含めて)の中でもかなりすごいものだったが、それでもこうした獲得した新しい視界は、ヒナにとってどんなものだったのだろうと思う。
しかしまだまだ苦難は続く。今回のヒナたちは、なぜかこれまでのヒナちのパターンとは異なり、スムーズな弾こうに必要な脚の訓練を一切しないという子供たちだった。そのため膝は常に伸びきった状態が多く、上手く膝を曲げること、曲げ伸ばしの往復というものを行うことが出来ない。そのため、飛び上がるのは無理やり上半身で出来ても、着地の際に適切に衝撃を分散し安定を保つということがしにくく、移動する(着地)ときにいちいちよろけるのだ。鳩が手すりや室外機の上ですべったりこけたりしているところなんて、なかなか見れないと思うが、思わずみていて「きゃーあぶないよぉー」「おちるよぉー」と声を出してしまったほどである。たぶん、人間の初心者が平均台を歩くのより危なっかしいと思う。なんせここは地上7階。ここから落ちても辛うじて墜落死はしないかもしれない(ばたばた暴れていれば、それなりに取りは浮力がつくので)が、きっと戻っては来れないので、やっぱり危ない。手すりの上を歩いたり、方向を変えるためにジャンプをしてみたりしているうちに、それでもすこしずつ要領を掴んでいく。
でも膝の屈伸が出来ていないから、ヒナたちは心なしか仰け反るようにして真上にしか飛べない。まだ飛行に必要な前(鳩の場合、ダイレクトに脊柱の延長方向)に力を伝えることが出来ない。その内、最初は落下したヒナも手すりの上まで飛び上がり、底にまた親がやって来て、ベランダの手すりの上でちょっとだけヒナにえさを与えてから飛び去ってしまう。それを追いかけたヒナがよろけながら少しだけ前にジャンプする。そして「あれ?」というようなしぐさをみせる。そうしてヒナたちは今、自分が出来たことを確かめながら、また次へと進んでいくのだ。

こういうヒナたちの様子を見守れるのは、やっぱり楽しい。下手な青春映画やスポ根ものを見せられるより、普通のテンションで素直に感動する。生きていくための努力って素直だ。今回のヒナたちはジャンプも飛行も「上手」というよりは「へたっぴ」だけど、でも私は「なにやってんだこいつら」というふうにバカにする気持ちにはなれない。だからといって「はたっぴ」が「(普通に)飛べた」という落差をもってして感動しているわけではない。あったりまえだが、すべき努力は全部すべきだし、プロセスを抜かしてはならん、という、そういうあたりまえなことを思っただけである。自分がすべき努力は誰に遠慮することなく、きちんとすべきなのである。

今朝の鳩たちは随分飛べるようになっていたが、しかしまだまだテイクオフの瞬間の初期動作が重い。膝が使いきれて居なくて、翼で舞い上がっているのである。でも、きっとなんとかなるだろう。
一時はヤンバルクイナやに鶏のように飛行しない「新種の鳩」としてこのままずっとベランダに生息するのかしら・・・などとあらぬ想像をしたが、特別だから、普通だから、良いとか悪いというのではなく、彼らの人生(鳩生?)を営んで欲しいと思う。

でもあとちょっとしたら、ベランダの掃除をしなくちゃなー。

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