えこひいき日記

2005年6月29日のえこひいき日記

2005.06.29

雨降らないかしら、といっていたら降ってくれたわ。わーい。

先週、京都芸術センターで行われた「京都コンテンポラリー・ダンス・ラボ ブリッジ」では4日間講師のお役目を勤めた。
このワークショップは私にとって個人レッスンでは出来ないことをする実験的な場であり、それだけに参加者の反応によってどのように進めるかなど内容も変わっちまうのだが、なかなか楽しい4日間であった。
今年の3月に昨年のこのワークショップ参加メンバーが作る舞台を拝見して、私はある種の衝撃を受けた。「踊る」という行為と「表現」の関係について根本的な疑問を感じてしまった。良い意味でも、悪い意味でも。
そこで今回は小さな動きにも妥協許すまじ、気分はスパルタ、という乗りでワークショップに臨んだ。例えば「5分間立つことを継続する」「5分間空間に存在し続ける、という意味で立つ」「動作の医師が動作になる瞬間を捕まえる」とかね。地味ですが、集中力の要る内容だったと思う。こうした作業はそれ自体が出テクニックではなく、いわゆるダンステクニック以前の段階を掘り下げていく作業、身体の感受性をはぐくむレッスンと言えるかもしれない。こうしたかなり時間を費やしたのだが、参加者の多くは飽きずに、それどころか集中力のある興味を持って参加してくれたので嬉しかった。また直接的にダンス以外のことについてもいろいろ話をした。そういうやり方をダンスのワークショップらしくないと思った人もいたかもしれないは、ダンスとて多様な表現手法の一部、広い意味で「表現」に目を向けてくれるきっかけになったなら嬉しい。

もしもワークショップ参加者でこのページを見てくださっている人がいたなら、アドバイスを少し。
ワークショップは、基本的に4日間受けていただいてある程度の流れを形成する要素が高いものだったことに加え、特に今回は地味で密度の高いプログラムを選択したために、一日だけの参加の方などには分かりにくかったかもしれません。
また4日間通しで受けていただいた方にとっても、私のクラスは何か新しいステップを教えるとか、「こうすればいい」などという命令的な?アドバイスを一切行わないクラスなので、この4日間で何かが完結するというようなものではなかったと思います。
それだけに是非、悩んでいただきたいと思っています。
もしも私のワークショップで何か少しでも新しい視点、新しい観点を見出した部分があったなら、それを「やろう」と思う前に、自分がこれまでどのようにダンスの訓練や練習をしてきたのかを振り返ってみてください。その中にはこれまで通り続けても良い練習方法もあれば、「これはどうだろう」と疑問が湧いてくる練習方法もあるのではないでしょうか。その「悩み」が新しいアイデアを生み、自分自身に合った練習方法やテクニックを生み出していく種になると思います。
ダンスは、身体に依存する表現です。それだけに、表現するためのテクニックを育てていく段階で自らの身体性が「壁」のように思え、身体能力の開発(例えば高く脚が上るとか、開くとか)こそダンスのように勘違いしてしまうこともあるかも知れません。その勘違いによって、偏ったお稽古方法しかしていないとしたら、それはすごく残念なことだと私は思うのです。もちろんハイ・スキル、ハイ・テクニックは身体言語における「饒舌さ」「決め台詞」的な側面があるといえましょう。でも、「饒舌」であることが必ずしも物事をよく伝えるとは限らないようですよね。伝えよう、伝え酔おうと思って振りの数を多くしたところで、その数に比例して理解が多く得られるというものでもないし。
ダンス表現において必要なのはあなたの思考を身体動作に置き換える際の「精度」ではないかと私は考えます。思考と動作の間にあるものを密にしていくのはその人の感性、身体的な意味をも含む感受性だと私は思います。例えば、単純に腕を動かす、歩く、といった「できてしまう」動きの中にも無数のやり方があること、その違いが分かること、その違いをある程度コントロールして動けること・・・それを自らのからだの使い方、動き方に気付くことから始めていってもらえたらと思っています。
これからの皆さんの日々のお稽古、舞台、活動に期待しつつ。。。

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