えこひいき日記

2007年8月6日のえこひいき日記

2007.08.06

先日J氏の舞台を観に東京に行ってきた。考えて見れば、本人が振り付け演出だけを行い、舞台に登場しないという公演は初めてではないだろうか。

その1ヶ月前くらいに、金沢で行われた公演を観にいっていた。この公演はトヨタ・コレオグラフィー・アワードの受賞者によるガラ公演。J氏のユニット、J&M自身も作品を踊るのだが、金沢でのワークショップメンバー2人がJ&Mのレパートリーを踊るという企画も加えられていた。考えて見れば、私がJ&Mの作品を彼ら以外のダンサーが踊るのを観るのも初めてであった。
時間の関係から、私はワークショップメンバーが踊っている作品の途中から拝見したのだが、こうして拝見していると、「振り付け」と「ダンサー」との関係が改めて見えるような気がした。そうか、J&Mの作品って、「振り付け」ないし「ムーブメント」としてみると、こうみえるのか、という発見があったのだ。作者である彼ら以外のダンサーが踊ってみせなければ、それはなかなか「見えない」。普段は(レッスンのときはともかく、劇場で観客としてみるときは)、ダンサーである彼らと、振り付け者である彼らとが不可分に現れたものとして舞台上の「作品」を観てしまうからである。そして逆にJ&Mら自身が踊っているところを拝見すると、そうか、彼らって「ダンサー」としてみると、こういう人たちなんだ、やっぱ、うまいわ。とか思ってしまった。彼らとの付き合いは10年を超えるけれども、ヒトの肉体はこうやって表現の媒体になりうる「存在」に変遷していくんだ、ということを改めて感慨深く感じた。
ちなみに金沢公演の会場となった金沢21世紀美術館はうわさに違わずとても素敵な美術館であった。時間の関係から私は公演後ほとんどすぐに京都に戻る、という日程になってしまっていたので今回ゆっくりは拝見できなかったが、よい!今度はこの美術館目当てに金沢に行きたいところである。

J氏の作品『陰圧』は、舞台上には彼が登場しないにもかかわらず、とてもはっきりとJ氏の存在らしさが感じられる作品だった。不思議な感じがした。と同時に、人がものを創るということ、表現をするということって、すごいな、と改めて思った。人が創るものとは不思議なものだ。ときにその人以上にその人の存在を示す。
この作品は男性ダンサー二人によって、ほぼ50分間ノンストップで上演される作品なのだが、緊張感と初々しさと、ちょっと笑っちゃうような感じを交えつつ、目を背け難い何かを観客に見せ付けていく。ダンサーの二人もとてもイイ。
J氏が一貫して描き出そうとする関係性の物語。デリケートな表現とインパクトの共存。今後が楽しみなJ氏の作品であった。

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