えこひいき日記

2014年2月12日のえこひいき日記

2014.02.12

術後6日目。
「それ」が筋肉痛であることに気がつくまで時間がかかった。私の感じたそれは、普段感じている筋肉痛とは相当に感覚が違った。重たい水がふくらはぎに流れ込んできてパンパンになり、動かなくなる、みたいな感覚だったからだ。そのことを理学療法士に告げると、最初に憂慮されたのは血栓。しかしマッサージなどしてもらってわかってきたことは「これは筋肉痛なんだ」ということ。新鮮すぎて驚く。まあ、3日間固定し、その後の三日間夜間固定していた脚を、今度は急速に動く方向に持っていっているのだから、仕方がない。

(その後私はさらに「筋肉痛」の恐ろしさを知ることになるのだった)

今日は左脚に50%の体重をかけての歩行練習。2日前に覚えた30%の感覚を書き換える。新鮮だ。身体が感じていることと視覚的に感じていることがずれている。でも数分で修正できた。人間の感覚って不思議だ。リハビリの作業は、単に「元に戻す」というよりも、昨日の感覚を今日のバージョンに上書き、今日得た感覚は明日また上書き、というふうに、どんどん書き換えていく作業のように感じられる。「歩行」とか「バランス」の感覚を固定化してしまうとリハビリは進まない。手前味噌だが、私の回復ぶりが「驚異的」と評価していただけるのは「以前に戻る」とか「できる感覚の固定」として動作をしているのではなく「今の“できる”を更新し続ける」だと思っているからかもしれない。

術後7日目。
今日は左脚に75%の体重をかける。昨今感じたことの無い感覚だ。75%の体重を、足元の体重計を見ながらかけてみると、感覚的には大転子の上に体重を乗せているような感じだ。えらく左に傾いているような感じ。だが、左脚に痛みや不安定感は無い。不安定感の無さは、手術前とは雲泥の違いだ。ただ、まだ筋肉が動けきっていないので動きにくいだけで。今日から松葉杖を一本にする。「手放してもらってもいいですが、まあ念のため」とのこと。
リハビリのあと、部屋で機嫌よく休んでいたら、抜糸をするので処置室にきてくれ、という呼び出しがかかる。はいはい、と立ち上がろうとすると、動こうとする股関節に対して臀部の筋肉が痛くてついてこない。思わず前のめりにこけそうになった。危ないので、処置室には松葉杖2本を使って移動。ふくらはぎも背中も筋肉がこわばり、動きの意志に上手く反応してくれない。
これには理由があった。私があまり傷の痛みを訴えないので「処方されている薬の中から痛み止めを抜いてみてもいいですよ」という看護師のアドバイスの元に、今朝は痛み止めを抜いていたのだ。どうやら痛み止めは傷の痛みを和らげるだけでなく、日々の強烈な筋肉痛を和らげるのにも必要なものらしい。それの証拠に、昼食後には処方されている薬を全部服用すると、筋肉が動くようになってくれた。オソロシイ。今起こっている筋肉痛って、本当に普段の「ちょっときつい運動をしたときに起こるやつ」とはちょっとレベルが違う。
ちなみに抜糸は、傷口を縫い合わせた「糸」ならぬ、ホチキスの針みたいなモノをピンセットでちょんちょんと抜き取る作業だ。多少皮膚が引っ張られてつんつんするが、さほどの痛みも無い。今日は傷口にガーゼを当てて保護。シャワーなどはお預け。

術後8日目。
朝、看護師さんに抜糸後のガーゼを取ってもらう。幸い出血も無いので、本日よりシャワーも堂々の解禁(これまでも、傷の上に防水シートが張られていたのでシャワーは使えた)!抜糸後の膝を見てみると・・・自分の膝に不謹慎というか、気持ち悪いことをいうようだが、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』的な人面創みたいに見えなくもない。ちょうど傷口が3箇所合って、大小があるせいなのだが。思わず、昔読んだ中島らも氏の小説『人体模型の夜』の中の話を思い出しちゃう・・・まあ、よい。
本日のリハビリは、左脚で片足立ちすることから。クリア。筋肉をほぐしてチェックを受けたあと、寝転んでボールを脚で転がすことや、エアロバイクが始まる。さらに寝転んで脚を天井からのサポート器具でつるし、振ることなども。股関節周辺がほぐされて気持ちいい。エアロバイクは最初きつく、かつ左臀部の筋肉が強烈に痛むのだが、3分を越えると楽になる。むしろほぐれて動きやすくなる。ここに自分を導くところまで運動を続行するには、やはり理学療法士さんなり、誰かのサポートがないとできないだろう。リハビリにおいて、自分ひとりで痛みの壁を越えたり見極めたりするのは難しい。今日から松葉杖を離して歩行。「ほんとにまだ1週間前後ですか?」と周囲から言われるくらい、私の動きは安定しているらしい。

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