えこひいき日記

2008年5月30日のえこひいき日記

2008.05.30

先日、能と狂言と歌舞伎と日本舞踊のコラボ舞台『三響会』の舞台を拝見した。この舞台は、能や歌舞伎などに共通して活躍しておられるお囃子の亀井宏忠氏、田中傳左衛門氏、田中傳次郎氏によって結成された「三響会」に、能楽、狂言、歌舞伎、日本舞踊から豪華ゲストが集って演じるという、ありそうでこれまでなかった、とっても素敵な催しである。私は母親が日本舞踊をしている関係で、地方さん関係からご案内を頂き、拝見することができたが、評判の舞台らしく南座はほぼ満員御礼。京都花街のきれいどころさんも大勢来ていて、客席を見ていても目の保養になる。演目は、古典なのだが、新演出もあり、新鮮でおもしろい。特に、能と歌舞伎で演じられた『船弁慶』などは、久々に「哀しみ」で心が高鳴った。「哀しい」のに「心が高鳴る」ってへんなのだが、すごいぐっと来るのである。能の観世善正氏の存在感もすばらしいが、市川染五郎氏の“色気”が、最近すごい。今、乗りに乗ってる市川亀次郎氏の『安達原』もよかった。

いい舞台を観ると元気でるなぁ。

日ごろ仕事でも接することは多いが、改めてアーティストの方々を尊敬しちゃう。舞台関係の方々!ありがとう!そして、これからも励んでくだせぇ。すばらしい舞台は人類を救う!少なくとも、私という一個のホモサピエンスは救われている!(興奮しすぎ??)

ところで、うちの猫が失禁をするようになった。寝ている間に、たまにお漏らしをしてしまうのである。発見したときは「病気?病気?膀胱炎とか?腎臓とか?」とあわてたが、どうもお歳のせいのようである。
うちの猫は16歳。食欲もあるし、お通じもよいし、元気に猫タワーに上るし、飛び降りてくるし、元気なんだが、元気でも加齢はする。
私は加齢を、一概に「衰え」とは思っていない。加齢とは、その年齢なりに当然になるべき状況であり、また状況の変化である。もちろん、加齢による生活の不都合は、あると思う。でもそれは、ある価値観から見る単なる「都合」であって、それをもってして加齢が不自然なものとか、悪とかいえるものではないと思う。だから「加齢」そのものと、それ以外の要因で発生する「衰え」は分けて考えることにしている。もちろん、「それ以外の要因」に「加齢」が加わることで「衰え」が促進される場合は大いにある。でもそれは「加齢」の問題である以上に「生き方」の問題である。
どうもこの問題は、この差は年齢を重ねれば重ねるほど問題になる問題のようだ。例えば小学生の頃なら、どんな生き方をしていようが小学生はみんな小学生っぽいルックスや体力を持っているものだが、40代、50代、60代となってくると、とてもじゃないが、みな同じとはいえない。でも誰にとっても1年は1年なのである。でも、生き方は、たぶん歳月の流れほど平均的ではないのだ。
そんなふうに思ってしまうのは、逆に何でも「歳のせい」にする人間をそこそこ見てきてしまったからかもしれない。厳しいことを言うようだが、すぐに「歳のせい」という人間に限って、たいてい、加齢でも病気でもない原因で「衰えている」。若い頃から「もう歳だ」と言う。10代でも言うし、20代でも言う。「もう」とか「いまさら」とか。他人に対するエクスキューズや謙遜としてそう言っているうちは、かわいい。でも対外的な作戦だったはずのその言葉は、いつの間にか本人を「その気」にさせるものらしい。いつの間にか、何にでも、他人に対しても自分に対しても「歳だから」を「何も、しない」理由にしてしまう。
人は、歳月の経過によって衰えるのではないかもしれない。わからないもの、自分では決められなかったりするもの、コントロールできないものに対する不安感や絶望感を体内に溜め込むほうが、ずっと毒な事なのかもしれない。今、突然そう思った。

そういえば、最近、「完璧主義と理想主義って、違うな」などと思った。通常言われる「完璧主義」って、本当は「理想主義」って言ったほうがよいような気がしたのだ。思い描いたことが思い描いたとおりに成ったら、それはすばらしい。それを望む気持ちも間違っていないと思う。でも、もしも寸分たがわず思い描いたとおりにならないことが許せなくて、できたことよりも完全に思い通りにならなかったことのほうにだけ気を奪われるとしたら、現実的じゃないな、と思ったのだ。本当の完璧主義は、今ある条件を生かしつくす方法を考えること。今の条件の中でどこまでできるかを考えられること。あきらめずに。あきらめずに。
だから私は、表面的に問題なさそうに、上手そうに見え
ることでは許さず、「完璧に」からだを使うことを教え続けているんだと思う。単純に、「完璧に」使う方が楽でもあるんだけど。たぶん、その「楽」が、加齢を不利な条件にしないんだとも思う。つまり、「楽」って、物理的な身体の使い方なんだけど、生き方でもあるんでやんす。

以上。

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